私の生きた道、出会った人達

20と数年という短い期間ですが、職業柄たくさんの人と出会ってきました。高校留年、退学だったのか、はたまたもっと前から人生の分岐点はあったのかもしれません。そこから夜の世界に飛び出してみたり、高卒認定をとって大学に入ってみたり…今や社会人として世の歯車になっています。私がいつどこでどんな人と出会ってきたのか。何を得たのか、学んだのか…少しでも参考になればとここに拙い文章ですが残していきます。

大嫌いな弟

 

昔から弟が大嫌いだった。私が持ってない愛くるしさも無邪気さも全部持っていた。小さくて細い私の目と違って、くりっとしていて飴玉のようにコロコロ転がる愛嬌のある瞳を持っていた。親戚から好かれるのもクラスメイトに馴染むのもとても上手だった。そんな弟が嫌いだった。

私は嫌いな弟を邪険に扱うことが多かった。ドン臭くて泣き虫で愚直なやつ。それなのに私のしていることを真似したり、後ろををちょこちょこ着いてくるもんだから尚更腹ただしかった。足が遅いくせに全力であとをつけてくるもんだから、私の近くにいる時はリンゴのようにほっぺたが赤く腫れていた。本当にバカ健気だ。

 

そんな弟も中学になる頃には私より背が高くなっていた。弟のくせに生意気だ。塾の帰りが遅くなる時はいつもリンゴのようなほっぺで迎えに来た。私の帰りが遅くて心配になりチャリで迎えに来た。一丁前に姉の心配をするなんて本当に生意気だ。

 

高校に上がったらケイリン自転車競技に精を注ぐようになった弟。悔しいけどかっこよかった。地元の新聞に名前が乗るようになった。努力は後一歩のところで報われず、毎度全国大会を逃していた。そんな時でも笑顔で仲間を送り出せる弟が嫌いだった。

 

大学に入って一緒に酒を飲むようになった。昔みたいにリンゴのように頬を赤く腫らしてぽつりぽつりと弟が話し出した。

「姉のことはいつも尊敬してたんよ。何でも頑張れるすごい人だと思ってた。でも小さい体で全て背追い込もうとするから心配なんよ。いつも考え込んで眉間にシワを寄せてる姿よりも今日みたいに笑ってる顔がみたい。だからなんかあったらもっと頼ってよ。」

久々に見る弟の泣き顔は昔と何も変わってなかった。そして本当はずっと前に気がついていた弟のことが嫌いなんじゃない。嫉妬していただけなんだって。無邪気で愛くるしくて素直な弟を見ていたのはずっと私だったんだって。弟は私の後ろをついてきてたんじゃない。私の半歩後ろを歩きずっと見守っててくれてたって。

 

私の大嫌いな弟。でも世界一愛くるしい弟。